ハラスメント対策できていますか?

児童発達支援や放課後等デイサービスでは、ハラスメント防止のための対応が基準省令により求められています。パワハラ防止法(労働施策総合推進法)などでもハラスメント行為は禁止されていますが、基準省令で直接求められていますのでより注意して取り組んでください。
(労働施策総合推進法では、中小企業は2022年4月1日まで猶予期間がありますが、基準省令では猶予期間はありません。)

ハラスメント防止のための対応は、職員のほかに、利用児童や保護者も対象となります。すべての人が不快な思いをしないよう、十分に配慮してください。

目次

ハラスメントは対応必須課題

令和3年度改訂の基準省令第38条第4項において、職場におけるハラスメント行為の禁止が追加されました。猶予期間は設定されていませんので、まだ対応してない事業所はすぐに対応しなければなりません。

ハラスメント(いじめ・嫌がらせ)は個別労働紛争相談9年連続トップ

厚生労働省の調査によれば、総合労働相談コーナーに寄せられる「いじめ・嫌がらせ」いわゆるハラスメントに関する相談件数は10年連続でトップです。

2020年の相談は少し減りましたが、それでも全体に22%以上を占めるとても多い相談内容です。

実際に相談された件数のみがカウントされますから、水面下ではさらに多くのハラスメントが存在していると予想されます。事業所におけるハラスメントの発生は、他人事ではありません。

男女雇用機会均等法やパワハラ防止法などの施行により、中小企業において、特に児童発達支援や放課後等デイサービスでは、義務として早急な対応が求められています。

ハラスメントとは?

つぎの3つの要素をすべて満たす行為を言います。

  1. 不快な思いをさせる言動であって
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

不快な思いをさせる言動は、優越的な関係を背景としたパワハラ(労働施策総合推進法)、性的なセクハラ(男女雇用機会均等法)、出産・育児等に関わるマタハラ(育児・介護休業法)の3つの取組みが義務づけられています。ハラスメント行為にはさまざまな定義がありますが、法律を背景としたハラスメント防止も今後増えていくと考えられます。

言動や行為を客観的に見て、業務上必要かつ相当な範囲と指示や指導については、ハラスメントには該当しません。「平均的な労働者の感じ方」がひとつの判断基準とすることが適当とされています。

ハラスメント防止の義務

労働施策総合推進法などで求められる、ハラスメント防止のための「義務」について、つぎの4つが義務とされています。

  • 事業主の方針の明確化及びその周知・啓蒙
  • 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  • 職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
  • 上記に併せて講ずべき措置

4つの義務について、ハラスメントを防止するためのポイントを解説していきます。

ハラスメント防止対応のポイント

事業主の方針の明確化及びその周知・啓蒙

ハラスメントに対する姿勢を明確にして周知することが求められます。具体的には、就業規則などへハラスメント禁止の記載を行います。

第○章 服務規律
 第○条 従業員は、次のような行為を行ってはならない。
  1. 他人に不快な思いをさせ、会社の秩序、風紀を乱す行為
  2. 職場内において、優越的な関係を背景とした言動であって、業務上の必要かつ相当な範囲を超えたものにより、会社の秩序、風紀を乱す行為
  3. 職場内において、性的な言動により他人に不快な思いをさせ、会社の秩序、風紀を乱す行為
  4. 職場内において、妊娠、出産、育児休業などに関する言動により、他人の就業環境を害する行為

第△章 懲戒
 第△条 従業員は次のいずれかに該当するときは、その情状により、けん責、減給、出勤停止又は降格とする。
  1. 第○条(服務規律)により会社の秩序、風紀を乱したとき
 2 従業員が次のいずれかに該当するときは、その情状により、諭旨解雇又は懲戒解雇とする。
  1. 前項の行為が再度に及んだもの又はその情状が悪質と認められたとき

就業規則ハラスメント記載例

ほかにも、具体的な基準を記載した就業規則の記載例や、説明会・研修や、リーフレットなどを作成し、周知する方法が推奨されています。

参考: 職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!(厚生労働省)(PDF)

相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

労働施策総合推進法では、相談や苦情窓口の設置が義務づけられています。ハラスメントについて相談したいとき、だれに相談すれば良いか窓口担当者を決め、職員へ周知する必要があります。

また、ハラスメントの事実があるか微妙な場合でも、広く相談に応じることが求められています。

児発や放デイ等小規模な事業所では、代表者や児発管が窓口になるかと思います。対面での相談以外に、メールなどによる相談ができるよう周知しましょう。

さらに、産業医など外部の相談窓口を設定できるとより良いとされています。

職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応

相談内容には、事実関係を迅速かつ正確に確認すること。

ハラスメントの事実が確認できた場合は、速やかに被害者・行為者に対する配慮の措置を適切に行い、保護と処分を検討します。

もし、誤解であれば、両者に説明し、再発防止策を検討します。

再発防止策の検討は重要です。事実がある場合もない場合も、同様の相談・苦情が今後発生しないように対策が求められます。

併せて講ずべき措置

当事者などのプライバシー保護のための措置と実施を周知してください。

そして、相談、協力などを理由に不利益な扱いをされない旨を定め、周知啓発する必要があります。

さらに、ハラスメントの防止のために望ましい取組みを積極的に実施しましょう。一元的な相談体制の整備や、背景となる要因の解消のための取組みとして、定期的なミーティングの開催による風通しの良い環境整備や研修の実施が望ましいです。

研修動画などが「Noハラスメント あかるい職場応援団(厚生労働省)」で公開されていますので、ぜひ活用してください。

さいごに

ハラスメント防止とその対応について解説してきました。

職員によるハラスメントの対策はもちろん、利用者や保護者に対するハラスメントも禁止されています。法律で定められたハラスメント対応についてしっかりと対策し、快適な職場環境を整備してください。

ハラスメントの無い環境での提供される児童発達支援や放課後等デイサービスは、職員の精神的な余裕も生まれ、利用児童にもより良い影響があると思いますので、ぜひ取り組んでください。

参考

放デイの中高生が、具体例として学ぶのに良い本として「トラブル回避のために知っておきたい ハラスメント言いかえ事典」をおすすめします。
自分がハラスメントを起こさないための知識として、ストレートに言ってしまわないよう言い換えを知っているのは大きいです。ぜひ、職場の改善のほかに利用児童の教育にも活用ください。

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