育児・介護休業法による介護短時間勤務は、週の勤務時間を30時間にし、介護をしやすくすることを目的に「介護離職ゼロ」をめざして法律で決められた働き方です。会社により使用できる制度が異なりますが、介護と仕事を両立するひとつの制度として提供されている場合があります。
児童発達支援や放課後等デイサービスでは、介護短時間勤務を利用する従業員を常勤換算1としてカウントして良いとされています。そのため、常勤換算で認められる加算が取得できます。また、常勤としても認められますので、人員基準や児童発達支援管理責任者の常勤職員としてカウントもできます。
週の勤務時間が短い介護短時間勤務を利用することで加算を取得できることから、事業所は収入を確保できることから不足人員を雇用しやすく、従業員は介護がしやすい環境が整うことで、退職されにくく働きやすい環境が整備されることを期待されています。
育児・介護休業法による介護短時間勤務について詳細を解説します。
育児・介護休業法とは?
育児・介護休業法は、子育てや介護と仕事を無理なく両立できる環境を整備することを事業者に求めた法律です。
介護休業が有名な制度ですが、その他に介護のために短時間勤務、時間外労働の制限などがあります。
厚生労働省の「介護休業制度」がわかりやすいのでご覧ください。
対象者は?
対象家族の範囲
次の図にあるだいたい2親等以内の方を介護や世話する人が対象です。
要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族の介護や世話をするための制度です。介護休業の対象者と同じになります。
常時介護を必要とする状態に関する判断基準
つぎのいずれかの状態であることが判断基準となります。
- 介護保険制度の要介護状態区分において要介護2以上
- 判断基準表の状態(1)~(12)のうち、2が2つ以上または3が1つ以上該当し、かつ、その状態が継続すると認められること(厚生労働省サイト)介護認定を受けなくとも良い
精神上の障害も認められていますが、障害支援区分での判定はありませんので、判断基準表に基づくことになります。
ただし、労使協定がある場合には、勤続1年未満と週の所定労働日数が2日以下の労働者は対象となりません。
手続き
就業規則などの整備
就業規則等に定めることとなっています。そのため、育児・介護休業に基づく短時間労働の実施という項目をつくる必要があります。できるだけ詳細な就業時間などを定めることが推奨されます。
要介護状態にある家族を介護する職員は、希望する2週間前に申し出ることにより、育児・介護短時間勤務等の定容を受けることができる。
育児・介護短時間勤務を適用する職員の就業時間は、午前10時から午後5時までとする。
介護による短時間勤務等を定める就業規則例
子を養育又は介護する職員は、申し出ることにより、育児・介護休業法に基づく育児休業・子の看護休業、介護休業など、育児・介護のための時間外労働および深夜業の制限ならびに育児・介護短時間勤務等の定容を受けることができる。
特定せず育児・介護休業法に対応する就業規則例(細かいことは面倒な人向け)
さらに、実地指導などで運用を確認されても提示できるように、申出書を提出させ、労働契約書や労働条件通知書、または短時間勤務取扱通知書を作成するようにしてください。また、次の関連法令の一文を入れた上で、勤務時間を明示しておく方が安全です。(年齢により条文が異なりますので注意してください。)
育児・介護休業法第23条第3項に基づき、所定労働時間を短縮し労働契約を締結する。
就業時間は、午前10時から午後4時45分までとする。
短時間労働を締結する時の参考文面 (週5日6時間+任意の休憩45分の週30時間勤務)
具体的な就業規則の例や申出書などの詳細は、厚生労働省 育児・介護休業等に関する規則の規定例をご覧ください。
申請と取得方法
要介護状態の家族を介護する従業員が、事業所へ希望を申し出ます。
事業所は、2週間より先であれば承認しなければなりませんが、希望の開始日が2週間を切っている場合は、変更を希望できます。
申請書などの参考書式
介護短時間勤務取扱通知書 または、介護短時間勤務労働条件通知書 は、どちらかを作成して職員へ通知してください。
勤務時間の設定方法
原則として1日5時間45分~6時間の週30時間とするのが標準的な設定です。しかし、児発や放デイでは、週30時間以上の勤務で常勤または常勤換算1として認められますので、週30時間未満の短時間勤務にならないよう注意してください。
事業所に運用が任せられている点があり、事情に合わせて、1日8時間の4日勤務(週32時間)などの労働者の選択肢を増やすことが望ましいとされています。
給与について
給料は、実際に働いた時間に応じて支払うことが認められています。そのため、短時間勤務を利用すると、給与が減る場合があります。
ほかの従業員との不公平感がないよう、標準就労時間と実勤務時間の割合で給与を設定されることが多いです。
常勤職員として認められる
介護短時間勤務を活用した職員を、週の所定就業時間より少なく、基準の週32時間を下回る状況であっても、週30時間以上の勤務をもって常勤職員として取り扱えます。
人員基準や児童発達支援管理責任者で求められる「常勤」の取扱いについて、週30時間以上の勤務により常勤として認められます。
常勤換算が使える加算
- 児童指導員等加配加算
- 専門職員加配加算
常勤換算で1以上配置すると加算が認められます。
介護短時間勤務を活用した働き方の従業員を配置することでも、加算を得られます。そのため、育児と仕事を両立する従業員を雇用し続けやすくなります。
常勤換算とは、常勤職員の週の就業時間を基準として、兼務や短時間労働の勤務時間を換算する方法です。常勤職員の配置を求められる人員基準と大きく違うのは、6日・7日営業していても、週の勤務時間が1名分の勤務で常勤換算1とカウントされることです。常勤職員の配置が求められると、6日の営業では2名以上の配置が必要になりますが、常勤換算では兼務や非常勤など合わせて1名分で加算が取得できます。
さいごに
短時間勤務で加算を取れますが、現場では労力が不足することがあります。介護短時間勤務での常勤換算1は、利用者への支援を十分にできるスタッフがいることが条件となっていますので、支援の現場で無理が生じないように注意が必要です。
介護も仕事も両立でき、「介護離職ゼロ」をめざした環境は人員不足で悩む事業所が多い児発や放デイでは大切な取組みとなります。経営者は収入も大切となりますが、ぜひ就業環境と収入の両立をめざした、よりよい人員配置を実践してください。
参考資料
- 厚生労働省 介護離職ゼロ ポータルサイト
- 厚生労働省 短時間勤務等の措置 介護休業について
- 厚生労働省 育児・介護休業等に関する規則の規定例
- 就業規則の定め方など具体例
- 厚生労働省 令和3年度障害福祉サービス等報酬改定の概要(PDF)
- 「人員基準における両立支援への配慮等」 に常勤などの取扱いについて記載されています